ケニア・カクマ難民キャンプ 2023年11月

Kaneko and Associates 代表取締役である金子が、自身がボードメンバーを務めるCWS(Church World Service)の活動の一環として2023年11月末にケニアを訪問しました。

今回の訪問を通じて、難民の多さとその運命について改めて考える機会になりました。クラウドやGen AIなどのテクノロジーが急速に発展し、日々の生活がますます便利になっていく一方で、未だに約3500万人もの難民が存在します。3500万人というと概ね世界第40位の人口のポーランドやサウジアラビアと同程度の規模であり、一国に相当する人口が難民として自らの定住地を求めて暮らしています。

数字で見れば今回訪れた場所の一つであるカクマ難民キャンプで暮らす人口はその1%にも満たない30万人程度ですが、それでも数多くの学校や病院なども持つこともあり肌感としてかなり大規模な場所であると感じました。同時に、この規模のうちわずか1%しか難民申請をして第三国に移住することができず、残りの99%の人はそこで一生を暮らすことになるという現実に難しさを感じました。

同じ地球に生まれたにもかかわらず、たまたま特定の場所や人種に生まれたことで自分の人生における選択の余地が大きく限られてしまうことや、それによりどのような辛さや苦しみがあるかなどを同じレベルで理解することはほぼ不可能に近く、一言に「難民問題を解決」ということの難しさ、奥深さを感じました。

以下、今回の報告ではCWSについて紹介した後、カクマ難民キャンプでの生活について一部を共有します。他にもWest Pokot、Marimdyも訪問しているので、次回報告します。

CWSとは

CWSの歴史

Church World Service(CWS)は第二次世界大戦後、17のキリスト教宗派が集結し単独では解決できない課題に共同で取り組むという信念のもとに誕生しました。当初、CWSは戦禍に見舞われたヨーロッパやアジアに救援を提供することに焦点を当て、1,100万ポンド以上の必需品を配給しました。

日本も例外ではなく、終戦後の日本人の生活を守ったララ物資もCWSによる支援の一環です。ララ救援活動に参加した団体は、YMCA、YWCA、ガールスカウトなど主に米国キリスト教系奉仕団体計13団体であり、その中でもララ救援物資の半分相当量を出荷していたのがララと同じ年に設立された米国のCWS本部でした。

戦後の米国では最初の10年間で10万人以上の難民を定住させ、安全を求める人々を歓迎する姿勢の基盤を築きました。

CWSの取り組み

時が経つにつれてCWSの取り組みは多様化し、1950年後半のキューバでの洪水や1980年代のエチオピアでの飢饉、2010年のハイチ地震などの緊急事態に対する支援を行っていきています。また即時の救援に留まらず、ホンジュラスでのインフラ整備支援やボスニアでの再生エネルギー開発、ミャンマーでの水道整備など、地域が繁栄することを重視した、長期的な開発にも取り組んでいます。

CWSは一貫して「歓迎」の原則を掲げ、米国での難民の定住のサポートを行い、現在までに86万5000人以上の難民を支援しています。CWSは地域の組織から国際連合までさまざまなパートナーと協力し、世界中の難民や保護が必要な人々にサポートを提供しています。

CWSとのつながり

Kaneko and Associates 代表取締役である金子は米国にある本部のCWSのボードメンバーを務めています。

CWSでは上記で紹介したような活動を行っており、金子自身はボードメンバーとしてCWSのミッションを活動の形にし、その活動のサポートや周知をしています。マクロで捉えると膨大すぎて取り組めないような難民支援も、まずは現実を知ること、それを知ったうえで小さくても自分自身でできることから取り組んでほしいという思いで日々の活動を行っています。

今回はそれら活動の一環として、訪問したケニアについて一部共有します。


ケニアのカクマ難民キャンプ:希望と挑戦の中で生きる20万の命

カクマ難民キャンプの起源と規模

1992年、スーダンの内戦から逃れてきた数千人の子供たち、通称「失われたスーダンの少年たち」を支援するために、ケニア北西部に位置するカクマ難民キャンプが設立されました。現在、このキャンプは30万人以上の難民を受け入れ、その大部分は南スーダンとソマリア出身の人々です。

CWSの役割と活動

CWSはカクマ難民キャンプから第三国に定住をする難民の健康面やバックグラウンドチェックを通じて、米国への移住対象となる難民を決定します。選ばれた難民に対しては、CWSは飛行機でのマナーから住居、仕事探しまで、包括的なカルチュアルオリエンテーションの提供を行います。なお、米政府からの要請で航空券は自己負担となっており、CWSがローンとして貸す形式で難民は飛行機に乗ります。CWSの活動の焦点はアメリカへの移住であり、米政府が受け入れる年間12万5千人の難民のうち、CWSは約4万人を割り当てられています。

今回はUNHCR職員帯同のもと、ゲートをくぐりカクマ難民キャンプへと入りました。

移住するもの、留まるもの

米国をはじめとした第三国への移住が決まる難民がいる一方で、カクマで一生を過ごす難民もいます。冒頭で紹介した通り、カクマ難民キャンプではわずか1%しか第三国への移住が決まらず、残りはカクマで過ごすことになります。こちらの写真に映る南スーダンとコンゴ出身の2人は既に10年以上、移住を望み続けています。

生活や仕事の厳しい現実

難民の中で労働可能な年齢層の中での雇用率はわずか20%に過ぎず、これはケニア全体の雇用率である71%と比較すると著しく低い数字です。難民は市場とコミュニティのニーズに適した職業スキルを持っていますが、ケニア内での仕事と移動には制約があります。

このような状況下、カクマ難民の68%が1日1.90ドル未満で生活しています。食糧は基本的には米、豆、パスタのみが配給され、他の食材を手に入れるにはキャンプ内で購入するしかありません。

未知の明日への期待と挑戦

このカクマに住む30万人以上の難民のうち、第三国に受け入れられるのはたった1%に過ぎません。残りの多くはカクマで人生を過ごすこととなり、自分が飛行機が来る日を待ちながら希望と挑戦の中で生きています。

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